街中で騒ぎすぎたせいね、住民がイージスに通報したみたい。薄情なデットエンドとチェイスは逃げてあたしひとりが残されたわ。見すてられたあたしはしょうがないから話したけど、だれも信じてくれないのよ! ひどいわ、本当のことなのに!
丸一日閉じこめられてうそだ本当だとどなりあっていると、夕方ごろいきなり解放されたわ。
翌日イージスの使いがケリュケイオンのあたしへきた。ミスレーニアスとなのり「デットエンドという人物からの伝言をあずかっています」といった。
「脳すすりとイーターの件についてはもう信じています。どこから手を回したんだか信用しろと命令がきて、昨日ブレイズの偉い人とうちの部長との緊急の話しあいがあったのよ。結果イーターのマーカスシティの支配について思ったよりも深く根づいているとの同意があった。いまさら首謀者が死んだくらいではとまらないだろう、放っておいたらマーカスシティ未曾有の被害が予想されます。よってこの件については私たちイージスとブレイザーが協力して対処することになりました」ふん、あんなに嘘つき呼ばわりしたのに変わり身がはやいわね。
「また解決にあたって非公式ながらメアリーが伝えた2人も協力することとなりました」一回言葉をきった。あら、なんだか不満そうね。
「本当のところ、やくざ者と協力するのはいやなのだけどしょうがない、一番詳しい人物なのだから。協力関係にある間、彼らが今までおかしてきた不正行為は目をつぶることにしました」そしていいにくそうに口をとじたわ。なによ。
「こんなことをいうのは私はいやなんだけど、デットエンドがこれだけはどうしてもいえと、たとえそれ以外なにもいわなくてもこれだけはいうようにと念をおされたの。だからいうよ、私がいいたいわけじゃないからね。えっと『もう関わってはいけない』」
直球だわ。ぐどぐどためらうはずよ。
「『ここから先はもっともっと血なまぐさくなる。人を切ったり逆におそわれたりすることもある。そんな中にメアリーをおけない。目をはなすとすぐ走りだしてどっかに行き、だれも思いつかない無茶をしでかすメアリーを横におきたくない。私の胃が炎症をおこす。いい、くれぐれも、断固として、なにがなんでもっ、ケリュケイオンでおとなしくして!』だそうです」おわってからミスレーニアスはおそるおそるあたしを見る。
「おとなしくしろって?」「ええ、そうです。どうかメアリーさん、あまり怒らずに」
「あたしだってそんな暇ないわよ!」
あたしは机をたたいたわ。くずれそうにはねるのは上につんである本、本、本! 馬鹿みたいな値段のくせににくいにくい教科書よ!
「なにしているんです?」「見ればわかるでしょっ、試験勉強よ!」
昨日帰ったあたしを待っていたのは青いディモス・トリステザ先生だったわ。
「メアリー!」いきなりおこられたわ。「どこをどうしたらイージスざたになるんだっ」
あたしだってしりたいわよっ。そもそも発端は先生でしょ。
「私はクロウを探せといったのよ、化け物殺ってこいなんていってないっ。イージスへの事情聴取、身元引受人に保護監督責任の追及。やっている間に論文ひとつ落としたわよ、どうしてくれるっ」機嫌が悪いはずよ。とっさにあたしはブーストワンドと脳すすりの首をさしだした。
「あげる!」「なにこれ」
「クロウの遺品とかたきの首」
おもむろに窓を開けて外へなげすてた。ひどいっ!
「生きているクロウをつれてこいといったんだぞ。疲れているのに生首見せるなぁ!」しょうがないでしょ、あたしだってすごく大変だったのよっ。
「やかましい! 約束だ、試験うけてもらう!」ひっ。
「たしか3日後にやるっていったよな。おとといの3日後、つまり明日だ!」ひぇ。
「ひどい点をとってみろ、奨学金うちきりなんて生ぬるいまねはしない、即座に退学だっ!」ひぇぇぇ、ひどい、ひどすぎる! 全部不可抗力だっていうのにっ。
「こんな時遊んでいられるわけないでしょ! あたしにどうしろっていうのよっ」「はあ。あ、では私はこれで」
「待って助けて!」
追いすがろうとしたけど逃げたわ。あたしはやるせなさとせつなさで泣きそうになり机につっぷした。
ひどいわ、あんまりだわ。あんなにがんばったっていうのにどうしてこうなるのよっ!