あたしの推理は半分しか合っていなかった。
合っていたのはザリ・クロロロッドは世話焼きだということ、外れたのは並み外れた世話焼きだということ。
その場ですぐに食料を差し出されたことは深く考えなかった。詳しい日数は分からないけどお腹はとてもすいていた、それはもうなにかを考えている余裕はなかった。
でもその後替えの服を羽織らせて、あちこちの傷に薬を塗って、さらに強壮剤のようなものを半強制的に飲ませたあたりであたしは引いた。さらに巨大な馬(黒海という名前らしい)に乗せて自分は歩こうとしたら、いくらあたしでも慌てて遠慮するよ。
「いいから乗りなさい」まるで取り合わない。
「わたしは元気一杯で歩けるけど、ギリスは違うのだから」「でも、あたしはザリに雇われたんだよ!」
「それとこれとは話が別。年長者として年下の面倒を見るのは当たり前のことよ。それに病人を歩かせるなんてとんでもない」
「あたしは病人じゃあない」
「今はね。半病人といったところかしら。弱っているのだし無理をしたら寝台から離れられなくなるわよ」
「でも」
「いいから。いい子だから言うことを聞きなさい。ねっ?」
あたしをいくつだと思っているのだろう。確かに年下だけど、まるっきり子ども扱いされるほど幼くもないんだけど。
「ザリはお医者さまなの」押し切られて歩きながら聞く。あたしはこの人のことをなにも知らない。
「いいえ、薬草師よ。仕えている水神殿の命令で薬草の分布調査をしているの。北から回ってアザーオロム山脈までついてね、これから西に行くつもり」医者じゃないけど近かった。
「方向は決めたけど、特に行く当ても目的地の心当たりもないのよ。どこかお勧めはある?」軽く聞かれてついつぶやいた。「学問通り」
「あ、いいわね」前を見ながら同意する。
「世界一のアム大学にはまだ行ったことなかったわ。エアーム竜帝国の西辺境よね。そうしましょう」違和感を覚えた。
いいの、行き先をそんな簡単に決めて。あたしは初対面の、どこの骨とも分からぬ人間だよ。
一回立ち止まると、おかしい点がいくつもこぼれてきた。
なんでただの薬草師に護衛が必要なの。しかも魔道士の。危険な旅になるはずがないのに、どうして身を守る人を欲しがるの。
「ふもとの人里で、もう一回ちゃんとしたご飯にしようね。あれじゃあ簡単すぎるわ。それから今着ている服もつくろわないと。ほつれているわよ」邪気なく嬉しそうに言うザリをあたしは不審の目で見る。この人、あんまり信用しない方がよさそうだ。