それからどうなったかって?
ドラゴンは無事倒されたわ。ブレイサー勢ぞろいの上両手に余るほどのメイジがいたもの。
どんな戦いだったかは会議室と上下階が壊滅、建物そのものがしばらく使用禁止になったことで察して。それはもう、すごいすごい戦いだったのよ。
その後もめてもめたみたいだわ。メイジの高位者が大勢いる中にドラゴンが出現したのは偶然かどうかということで。なにかの陰謀かさんざん調査をしたし、グレイはすごく怒られたみたいよ。伝説のブレイサーやるのも大変ね。自分が悪くないことでも責任取らされるなんて。
そうしてあたしはと言えば。
「ひどいわよ、見てニード!」あたしはニードの探偵事務所に飛び込んで泣き伏した。質素な事務机で書類を書いていたニードはうっかりコーヒーを吹く。
「ひどいって?」「これよ!」
差し出した紙切れをニードはさっと一瞥し、「ありゃ」猫耳帽子がずれる。
「……これらの事件の上でメアリー・ベリーメリーの衝動的な行動によって引き起こされた危険は重大で見過ごされるものではない。よってメアリー・ベリーメリーをブレイサーとして不適格な人物であると判断し、ブレイサーとしての資格を剥奪する」ニードはあたしを見た。
「犯罪も人殺しもしていないのに、資格剥奪される人を初めて見た」「まだ報酬も受け取ってないのよ! ひどいわ、ただ働きよ! 首になってあたしはこれからどうすればいいのよ!」
「私に言われたって」
さりげなくあたしから距離を置く。
「学校に戻ればいいじゃないの」「あたし退学食らっているのよ! その上」
「メアリー・ベリーメリー!」
古いアパートの扉がぶち壊されるんじゃないかと思うほど軋んだ。ぎゃあ、「青の」トリステザ先生!
「よくも会議室にドラゴン持ちこんでくれたわね! おかげで私の全実験停止、ずっと事件の調査だ! その上意図的にドラゴンを持ち込んだんじゃないかって言われて、それはもう大変だったのよ! おまえは私に恨みでもあるのか!」退学にしたのだからあるに決まっているでしょ。でもあたしのせいじゃないわよ!
「やかましゃあ! 出てこいメアリー、八つ裂きにして焼き尽くしてやる!」先生が生徒に向けて言う言葉じゃないわよそれ! きしむ扉にあたしとニードは震え上がった。
「メアリー、とんでもないもの持ちこんでくれたわね」「向こうが勝手にくるのよ!」
ドアはやがて耐え切れなくなり、金具がとうとう弾けて外れそうになった、きっとすぐにドラゴンよりも怖い教師が飛びこんでくるのよ。
あたしは泣きたくなった。わぁん、あんなにがんばったのに、どうしてこうなるのよ!