2月
古い文様が刻まれた扉を前に、私はため息をついた。この扉の向こうに、私たち冒険者が憧れてやまない古代遺跡がある。まだ駆け出しの私にとってこんな幸運はない。
そもそもワイバーンテイルズ亭に来た護衛の仕事が発端だった。ワイバーンテイルズ亭に集う冒険者たちは皆一流でこんな依頼には見向きもしないのだけど、駆け出しの冒険者にとっては糊口をしのぐ大切な仕事だった。ところが仕事中に偶然古代遺跡を発見したのだった。
私は再びため息をついて今この時を共にしている仲間たちを見た。ラーダ神官にして盗賊の―私はいつもこの組み合わせに疑問を持つ―チップ・ザナックと、同じく盗賊にして精霊使いのカルディナはどうやって扉を開けるか相談している。ハーフエルフのシェフィールドは周りを見渡し、いつも飲んだくれているエルフのクロノスもさすがに素面だった。
みんな駆け出しだが頼りになる仲間たちだった。でも…
そう、困ったことにこの中には専業戦士が1人もいなかった。もちろんチップやカルは戦えるが、それはちょこまか回避し急所を狙う盗賊の戦い方だった。シェフィールドは弓を使うけれど、弓師は前線では戦えない。クロノスは戦い方を心得ているが、体力に劣るエルフだ。いつまでも前には出られない。
(私が、いざとなったら行くか)私は不精不精決心した。私は魔法使いだけど、剣の使い方も学んでいる。幸か不幸か私は力も体力も人並み以上にあった。あまり魔法使いらしくない考え方に私は自分でもなんともいえない感情を抱いた。
がらりと扉が開いて、チップとカルが口を開ける。私は今の考えを振り切って扉の向こうを見つめた。
さあ、冒険の始まりだ…!
3月
エールの霞にいるみたいだ、と私は思った。
ここは冒険者の店ワイバーンテイル亭。ここの駆け出し冒険者たち、つまり私と同等の者たちがある依頼をこなした祝いとして、酒盛りが行われていた。もう過去形でしかない。今この場で元気なのは驚異的に酒に強い者とドワーフだけだ。そういう私もそろそろ限界が来ている。
「そして巨大アリがなんと3匹も出現したんだ!」まだ元気な誰かが喋っている。残念ながら、私はその仕事に加わってない。別用があってそれらには関わらなかった。もし加わっていたらとうの昔につぶれていただろう。
「すかさず眠りの雲をかけて、奴らを眠らした後その硬い皮膚の隙間に…」動物は基本的に魔法の抵抗力が低い。その魔法使いは実に正しい。ただ私は感嘆する心をとっくにエールの向こうに置いてきてしまった。
うう、もう駄目…
「おいフィナーゼ、聞いているのか?ここからがいいところなんだぞ」その言葉を最後に、私はずるずる夢の中に引きずられていった。
4月
「スリープ・クラウド!」眠りの雲が敵陣に出現し、巻き込まれた二人の魔術師が倒れる。でもすぐに目覚めてしまうだろう。なぜならここは戦場で、静寂とはかけ離れた空間だからだ!
何でこんなことになったんだろうとふと思う。単なる薬草集めの仕事がいつの間にか、古代遺跡の奥で謎の魔術師の一団と戦っている。負けるわけには行かなかった。彼らは魔剣でデーモンを呼び、そして今グレーターデーモンを召喚しようとしている。けして野放しには出来ない。
ぐらりとめまいを感じてよろめいた。精神力の使いすぎだ。自前の精神力はとうに使い果たし、魔晶石も今にも消えそうな弱々しい光を発している。私は前を見た。戦士のレヴィが一人でデーモンを食い止めている。私の横にはやはりふらふらの魔法使いのレンがいる。彼の魔法の実力は私と大差はない。せいぜい違いは私が剣の修行をもつんでいることだ。
私は決めた。魔晶石をレンへと投げる。レンは受け止めた。
「後はお願い!」私は剣を抜いて、前へ走った。
5月
頼りない明かりのみで、私たちは暗い下水道を渡っていった。当たり前だがひどい悪臭がする。これから何日も臭いがこびりついて離れないだろうなと思うとうんざりした。あまり冒険者らしくない考えだが、それでもついつい思ってしまう。
私は今、ワイバーンテイルズ亭の仲間たちとともに、謎の巨大生物発生を追っている。前々からうわさは知ってたが、実際にかかわれるとは思わなかった。自然にわくわくしてしまうー場所が下水道でなかったらもっとよかったのだが、それはしょうがない。
ぴたっ。自然に私たちの足は止まった。目の前にある闇の中、そこに何か潜んでる。
「ジャイアントラット!」レヴィがそう叫んで剣を構える。そうかな? その割にはなんだか大きすぎるような…
「フィナーゼ、ライトニングを使え」先頭を歩いていたグラスランナーのサージが言う。私はむっとした。たかがラットごときに魔法など必要ないし、そもそも命令されるゆわれはない。でも仮にも敵前で口論するのもばかばかしい。
シャァー! 襲い掛かるラットたちにたいし、私は呪文を唱え、発動させた。
「ライトニング!」カッと雷光が走り、あっという間にラットたちは全滅した。
それを見て、なぜか私は気分がすっとした。
6月
膨大な本の中で私は埋もれていた。もちろんこれは比喩表現だけど、これによって今の私の生活の大部分が圧迫されていると言うのは比喩ではない。
「…ふぅ」分厚い本の山から私は目を引きはがした。いいかげん疲れた。最後に席から立ったのっていつだっけ。いや、そもそも最後に人と話したのいつだろう…
にゃあ。寂しくなってしまった私に使い魔の黒猫のきょんたがすりよってきた。よしよしと頭をなでて、ついでに少し休憩することにした。机の端っこに危なっかしく置いてあるお茶を一息で飲み干す。もうほとんど残っていなかった。
こんなふうでも冒険していると言えるのだ。今私は今までの冒険で出会ったなぞの剣や、それにまつわる組織、デ−モンについて片っ端から文献を当たっている。そろそろ受身で事件に当たっていくのは止めてこっちから攻めないと、皆が思っている。そのためにひとつでも情報は必要だし、それらの調べ物が出来るのは魔法使いしかいない。
といってもこれじゃかえって効率が悪い。
私はきょんたを抱き、立ち上がった。少しワイバーンテイルズ亭でおしゃべりでもしよう。そうすればきっと頭もはっきりするだろう…
7月
3度目のダンジョンともなれば、攻略は楽に決まっている。少なくともそのはずだった。
「レムル、平気ですか?」「あぁ、もう消えた。なんてことはない」
私の前を戦士のレムルと精霊使いのライアンが歩いている。レムルの鎧には焼き焦げた跡がついていた。先ほど扉を開けたら油が降ってきたのだ。すぐに消したものの、私の心には暗雲が立ち込めていた。
本来ここは無人のはずだった。調査していたソーサラーたちが何か異常を感じてここは封鎖され、私たち冒険者の出番になったのだからそれも当然だろう。それなのにあのトラップは明らかに最近仕掛けられた物だった。
誰か、ここにいる。おそらく望まれない侵入者が。私の不安を感じたのか使い魔のきょんたがにゃあと鳴いた。
私たちは大きな扉の前で立ち止まった。
「ここの向こうにその、精霊の装置があったの」私の案内に従って、盗賊でありマーファ神官のジャネットが扉を調べる。
「……声が聞こえるよ。なんだか呪文詠唱みたいなのが」私たちは顔を見合わせ……頷いた。
「行こう!」ばんっと扉が開けられ、レムルとファリスの神官戦士、オッペンハイマーが先頭に行く。
「!」「うわっ」
私は驚いた。魔法使いのジヴェルも理解したんだろう。そいつは人ではなかった。ヴァンパイア、邪悪なアンデットがそこにいた。
「く、靴をなめたら見逃してくれるかも」ジヴェルが相等情けないことを言う。とはいえ、今の私たちにはきつい相手であることは確かだった。
「見逃してくれないと思う」私は正直に言って、杖を構える。と、ヴァンパイアが呪文を中止してこっちを向いた。
「……貴様は」その目はまっすぐに私を見ていた。えっ?
「懐かしいな、ここでまた会えるとは」「おい、フィナーゼどういうことだ!」
レムルが叫ぶ。私にはさっぱり理解できない。いくらなんでも、ヴァンパイアの友達を持った覚えはない。
……いや、待てよ、ひょっとしたら。
「嘘っ」思い出した。忘れていたのはそいつは消して長い付き合いでもなければお友達でもないからだった。昔、この宝玉をめぐって戦った敵ソーサラーだった。私は背中に冷や汗を感じながら、それでも強がった。
「復活したの。なら、もう一度黄泉の国へ送ってあげなきゃね!」8月
空を見上げてみる。小さな雲の塊が数個ある事を除くと、澄んだ青がどこまでも続く極上の天気だった。そんな空の下で私たち6人は冒険の仕事の依頼で、ある小さな村への道を進んでいった。
最初に言っておく。私はハイキング気分で好天を楽しんでいるのではない。きちんとした理由がある。前に空をドラゴンの一種、ワイバーンが飛んでいたことがあるから、その用心のためにこうして見上げている。今では私もファイア・ボールが使えるほど実力がついて、そんじょそこらの魔物には負けないつもりだけども、あれはそんじょそこらの魔物ではないし、朝っぱらから戦闘をしたい気分ではない。
頭を下げて、私は仲間たちの話に興味を移した。前では精霊使いのクロトーとマイリーの神官戦士エフトが和やかに話している。そして後では。「ティア、どうしても来るって言うのか?」
「はい。私のマーファへの信仰もそのためにあるのです。私はあなたのために行きます」
「……っ、そうか」
マーファ神官のティアとロマン派剣士レヴィの会話を聞いて、私は突発性偏頭痛を起こした。今回の冒険が初めてという、ティアという少女はただレヴィのためだけに冒険者になることを決意し、そしてここにいる。ついでに先日人助けのためレヴィは全財産を投げ出しており、今は金銭面のことはずっとティアに払わせている。はっきりいってヒモ生活だ。
誤解しないで欲しいけど、私も恋愛感情抜きでレヴィには好感を持っている。今回の冒険は実はレヴィが依頼主でもあるのだが、私は無償の友情料金で付いてきているくらいだ。彼は私の知っている中の一番強い剣士だし、その飾らない人柄は人をひきつける。
しかし私はレヴィが女の子の扱いが苦手なことと、複雑怪奇な乙女心の理解は出来なさそうなことは認めざるを得なかった。
私だってこの泥沼模様の中にわざわざ入っていきたくはないから口は挟まないけど……せめて声くらいはひそめて欲しい。全く。
冒険者の中で恋愛はご法度ということの意味が分かった気がする、と私は空を見上げた。空を見たいわけでもワイバーン・チェックしたいわけでもなかった。そこ以外に向きようがなかったからだ。
9月
いったい何が起きたのか、私には分からなかった。
「……う、あ?」少し動くだけでも全身が悲鳴を上げる。世界が暗い。意識が朦朧として、考えが上手くまとまらない。おかしい。確か、つい先ほどまでワイバーンズテイルの店で楽しくお喋りしていたはずなのに、何で私はこんなところにいる?
「! あ」自分に問うた瞬間、思い出した。そうだ、ワイバーンズテイルに神父風の男が入ってきて、自爆を仕掛けてきたんだった! それでワイバーンズテイルは崩れ落ちて、私は今瓦礫の下にいるのだろう。私は記憶の混乱があったものの、今生きていることを神に感謝した。
何でこんな目にあったかは、納得はしないが分かっている。ワイバーンズテイルの冒険者たちは今まで散々ファラリス信者やカーディス信者、そして赤の王と呼ばれるものを中心とする組織の陰謀を散々つぶしてきた。そのための報復なのだろう。しかし自爆なんて普通するなんて! せいぜいが店に火をつけられるくらいだと思っていた私は、自分の認識の甘さに怒りを覚え、そして震えた。他のみんなは無事だろうか。救助隊は出ているだろうか。
「このっ」私は首を動かして周りの様子を確認した。とりあえず、ここから出ないと。今自分がどこにいるのかが分からない。マフラーを取り、手に巻きつけて、手で瓦礫を除けようとする。本来青いはずのマフラーはなぜか赤く染まっていた。
ゆっくり私は這い出ようとする。視界は闇色に染まっていて、どこに出たらいいのか分からない。動くたびに瓦礫煙が目に入ってきて、大粒の涙がいくつもこぼれ落ちた。のどが痛い、咳が止まらない。
「誰か、いる……?」出した声は自分でも驚くほど弱々しかった。情けなさと痛みでまた視界がぼやける。
自分、しっかりしろ! 私は顔を上げた。私はフィナーゼ・トリス、冒険者だ。今までダークエルフもデーモンも仲間たちと共に打ち破ってきた。こんなところで死んでたまるか。今の爆発でも生き延びたんだ。ここから出るくらい、何でもない。こんなところでうだうだしてたらワイバーンズテイルのみんなに笑われる。
瓦礫の中をはいずり、私は前に進む。上へ、上へ、自分を引きずっていく。身体が痛い、目がかすむ。耳鳴りがひどく鳴り響き、何も考えられない。ここから出る、今はそれだけを胸に私は目の前の瓦礫をかき分ける。
不意に目の前が開けて、私は顔に風を感じた。岩が崩れる音と共に、私はごろんと落っこちる。呆けてつぶやいた。「あ……出れた」
私は立ち上がろうとして、失敗した。思ったより怪我はひどいらしい。瓦礫に寄りかかり、ぼんやり後を振り返る。かつてワイバーンズテイルだったものは、今ではただの岩の山だった。
爆音が再び響く。私はとっさに身構えた。はるか遠くで赤い炎が立つ。私はそこがどこだか知っている。
「王宮」そしてさらに爆音。神殿のほうから。そしてまた。今度は賢者の学院から。私は賢者の学院の三角塔が崩れ落ち、その上空に巨大な人影があるのを見た。あれは本で見たことがある。アークデーモンだ。
いったい今、ファンで何が起こっているんだろう。矢継ぎ早に起こる出来事に圧倒されて、驚くのも忘れて私はただそれを見上げていた。
10月
ワイバーンズテイルに張ってあるいくつかの依頼書を私は見比べていた。
冒険者にとっても仕事選びというのは言うまでもなく大切なことだ。どの依頼が身分相当か。簡単すぎるとつまらないし、難しすぎても生きて帰ってはこれない。今まで蓄積した知識や経験や人間関係も考慮に入れなくてはいけない。さて、どの依頼にしようかな……
今のところ、私が気になっているのはこのアークデーモン関係とゲラルド・ワインズマンの敵基地殲滅作戦だった。それ以外はあまり興味がないか、興味があっても他に受けたいという人が多いので遠慮する。まぁ、今回は魔道士がテイルで不足しているようなので、どうしても入れないということはなさそうだが。
どっちにしようかな…… アークデーモン関係はへまをしたら即死亡、な危険度だろう。常識的に言えば、手を出さないほうが賢いのだろうが、あいにくこのアークデーモンとはまんざら知らぬ仲ではない。そのことでは責任があった。一方、殲滅作戦はアークデーモンと戦うよりははるかに安全だろうが、それでも危険だろう。その上ゲラルド・ワインズマンにも会ったことがあった。こっちの秘密裏にやりたいことを付きまとわれて邪魔されて困った覚えがある。それはこっちにも責任がないわけでもないが、それでもあまりいい印象は持っていない。
さて、どっちにしようか。
ふと、隣に赤いマントが立った。彼が誰なのかすぐに分かる。そうだ、今回は彼の意見も聞く必要があった。
「レヴィはどっちにする?」自他共に認めるロマン派剣士レヴィはそうだな、といくつかの依頼書を見比べた。
「この2つにしようかと思っている」私といっしょの選択だった。これでは埒が明きそうにない。
今回私は依頼をレヴィと一緒に受けると決めている。もちろん理由はある、とても私的な理由だが。
前にスワン亭で、私はレヴィに告白された。あの時を思い出すと、ドワーフの火酒を一気飲みしたような衝撃が鮮やかによみがえり、私は困惑と恥ずかしさで一杯になる。なにぶん私は長くはない人生の大半を魔法と剣と冒険に費やしてきて、そこには色恋沙汰が入る余裕はなかった。いきなりの不意打ちは困るが、告白された以上、答えなくてはいけない。そのため、私はレヴィが私が恋人、相棒と認められるかどうか、次の冒険で見極めるということにした。
しかし、どうだろうか…… レヴィには好感は持っている。それにティアさんのことでは私自身、妙に心が揺れたから、期待はあるのだろう。しかし、私は恋人には一緒に冒険に出るパートナーとなってもらいたいし、その辺でレヴィとは認識のずれがある気がする。
それに。
「あ、マスター」レヴィがテイルの親父に呼びかけた。
「俺は今回、フィナーゼと一緒にしか依頼は受けないからな」これだ。
どうもレヴィには女心の理解能力に欠けているらしい。ティアさんのときもそう思ったが、まさかそれに自分が巻き込まれるとは思わなかった。
私はそれを聞かなかったことにして、依頼書に注意を向けた。かといってそちらに注意をしてばかりだと、肝心の冒険で生き残れなくなる。それは遠慮願いたい。
さて、どうしようか……
11月
ジャネットのターンアンデットが1体のアンデットを崩し、2体のアンデットに恐怖を与え、逃亡させる。残り1体が黒い腕を瞬間的に伸ばしてジャネットに襲いかかるも、ジャネットはあらかじめ分かっていたかのようにすっと右へ避ける。その隙にレヴィとエイジスがそのアンデットへ襲いかかった。
精神力の節約のため後ろで待機している私は、その光景を見て吐き気がこみ上げてきた。むかつきが止まらない。
ここは元はパミール村という所だった。恐らく、何もないけど平和で心安らぐいい村だったのだろう。1つ変わったことがあるとするなら、ここには黒のオーブが封印されていたことだった。その封印がどうも解けたらしい。抜けない聖剣を持つファリスの神官にして戦士のエイジスが私財をなげうって事件解決の依頼人となり、私たちをここに連れてきた。そこで私が見たものは混沌に包まれている、変わり果てた村の姿だった。
「うう…… あの人たち、元は村の人だったんだよね」精霊使いのプリシィが涙目になって口元を押さえる。その通り。彼らは元はただの人間だ。黒のオーブの侵食でこうなってしまった。私たちもその侵食の中にいるのだが、レヴィの持っているファラリスの魔剣のおかげで無事に入り込めている。中はほとんどダンジョンと化していた。
それだけでも嫌悪感を覚える理由としては十分だろう。しかし私にはもう1つ事情があった。
「仕方がありませんよ、プリシィ。こうなってしまった以上、安らかにすることが私たちにできる最上のことです」普段は香ばしいセリフを放つマイリー神官戦士のエフトも、さすがに神妙にプリシィを慰める。その言葉を聞きながら、私は背中の袋をそっと触れた。この中にはレヴィから預かった黒のオーブが入っている。村をこんな風にしたのとはまた別のものだが、性質は同じだ。ひとたび暴走すればこのような惨劇を引き起こす。
背中が燃えるように熱かった。のどが詰まったような圧迫感を感じるが、表情には出さないように必死に努力する。
「どりゃぁ!」エイジスとレヴィが切りかかり、あっさりアンデットを倒す。レヴィの剣圧により村を覆っていた混沌の一部が切り裂かれ、そこに村の残骸がかすかに姿を現した。
私はそれを見た。全員がそれを見た。元村だったそれを見た途端、私の中で何かがはじけた。
「う……うわぁぁ!」レヴィが悲鳴を上げて剣を落とす。ひっとプリシィが硬直する。それを見てすかさず冷静さを失っていないエイジスがとっさに呪文を唱え、レヴィの身体に触れる。サニティの呪文だろう。すかさず混乱状態に陥った全員にファリスの奇跡を行使して…… プリシィとエフトまで触れて、がくりとひざを付く。精神力を使い果たしたのだろう。
私はそれをひどく冷静に見て……くるりとエイジスに背を向けた。そのまま走り出す。
「! どこへ行く!」エイジスが叫ぶ。私はもうそんなことは聞いていなかった。もう使命も依頼もどうでもよかった。一刻も早くこのばかばかしい地獄から立ち去る、それが全てだった。
「待てよ!」私の前に精霊使いのカルディナが立ち塞がり、私をつかむ。邪魔だ!
私は逆につかみかかり、力任せに引き剥がすと半回転して、カルディナの重心を右肩に乗せた。一息に投げる。そして私は再び走り出した。
「あっ!?」足に何かが絡みついた。私はバランスを失い、倒れる。レヴィの投げたボーラが命中したのだと気付いたのは、頬を叩かれて正気に戻った後だった。
12月
そして私たちは開けた空間に出る。そこも今までと同じく闇の胎内だった。今までと異なる点があるとすれば……みんながいること。今の今までパーティを組んでいたレヴィやトランスたちのことではない。掛け値なしに全員、冒険者の宿ワイバーンズテイルのみんな。今回の戦いで、ジューダスが創り上げた混沌の闇に望んで入っていったみんなのことだ。私たちが逃げ込むように空間に飛び込むと、わっと歓声が上がる。
「レヴィらで最後だ!」「遅いよ、どうしていたの」
私たちを囲む温かい言葉を尻目に、私はよろよろとその輪から抜け出して、クリスさんから借りているソーサラー・スタッフに寄りかかる。
つ、疲れた…… 単に混沌の中を進むだけではなく、その間混沌にゆがめられていた精霊たちを全て開放していたのだった。精霊は精霊使いたちの力の源だ、これで彼らはより確実に術を使うことができるようになり、今後の戦いも楽になるだろう。それに時間がかかりすぎたせいて最終到着となったみたいだが。
呼吸を整えていると、軽く肩を叩かれた。よろよろと見上げると、私とそう身長の変わらない薄い栗色の髪の青年が心配そうに見ている。その後ろには銀の髪のハーフエルフの青年もいた。魔道士仲間のラール・ウィルス・レンとヒュールだ。レンが声変わりが終わったとはいまいち信じられないソプラノ声を響かせる。
「遅かったね。どうしたのかって、心配したよ」「フィナーゼのことだ。まず死なないとは思っていたが」
ヒュールが続く。どういう意味だ。ハーフエルフにしては恐らく種族最大級、そんじょそこらの人間にも見劣りしないほど頑丈なヒュールには言われたくはない。
まぁ、そんなことは置いておいて。
「それより、ジューダスは?」私たちの宿敵、本当に、本当の意味で世界を破滅させようとしているカーディス神官の名前を私は出した。それを受けて、レンが指を指す。
気付かなかったが、恐らくここはファンドリア王城だったのだろう。王城の謁見の間であったであろうその場所、そこにジューダスはいた。しかしその姿はすでに人間と認識する者ではなかった。
「……げ」一瞬私は受け入れがたく、うめき声を上げる。その身体はこの城自体を覆う混沌と混ざり合い、まるで一つの生物のようだった。壁に寄りかかろうとしていた身体を慌てて離す。いわば、ここの空間全てがジューダスであり、私たちはジューダスの内側にいるのだった。
「まったくもって理解しがたい連中だ。なぜ、世界のありようを受け入れようとしない。この世界は遥か昔に寿命を向かえているのだというのに……」その場が静まり返る。声のみは、前に聞いたものと全く同じだった。変わり果てたジューダスに、なぜか私は哀れみを覚えた。そんな場合ではないのに。
「すでにこの世界は終わっているのだ! 何時まで惨めに舞台に上がっているつもりだ! 『光』と『闇』の争いだと? 道化の芝居はもう見飽きたわっ!いま! ここで! この新たなる世界の神となる私が! 幕を下ろしてくれようぞっ!」
「……上等」私は崩れかけていた背筋を伸ばした。インペリアル・トパーズを抱いたソーサラー・スタッフを真正面に構える。そうだった。今は正真正銘に世界の危機だ。浅い同情心や、ましてや虚脱感なんて抱いているいる場合ではない。やってやろうではないか。とことんまで戦って、討ち滅ぼしてやる。
「おい、そこのソーサラーズ!」そんな私に水を差すように野太い声が飛び、1人の男がレンの背中を叩いた。ぐえっとうめいたレンにはかまわず男は続ける。
「こんな物を来るとき拾ったんだが、お前らに使えるか?」それは1本のスクロールだった。やけに古びているそれを、ヒュールと私が覗き込み、ほぼ同時に驚きの声を上げる。
「おい、これは」「どこで拾ったの、こんな物……」
はるかな天空の星を落として大爆発を起こす魔法、メテオ・ストライクのスクロールだった。古代語魔法としては最大級の威力を誇り、その使い手は世界に数人しかいない。
「これ、魔法使いにしか使えないんだろう? だから、お前たちの中で誰かが使ってくれ。この中で一番魔法が上手い奴が」私たちは顔を見合わせた。この中で、といわれても、私たちの魔道士としての実力はほとんど同一だ。誰が一番、なんてない。
「それか、ここ一番に強い奴が。万が一読むのに失敗したらことだ。それにそんなに凄い魔法なら、なるべく運がいい奴に使わせたいしな」レンとヒュールが同時に私を指さした。失礼な、と私は憤慨したが、自分でもその通りだと思うので何も言わずに一歩前に出て、スクロールを受け取る。男は任せた、と一声かけてからその場から離れる。
「あのぅ」また背中から、今度はおっとりした声がした。振り向くとそこにソフトレザーを来たエルフの女性が立っている。確か、あなたは……
「ファインベルか」私の代わりにヒュールが彼女の名前を挙げた。はい、とファインベルがうなずく。
「魔道士たちがここに集まっていると聞いたので、来ました。私、戦士としての心得もありますが、今回は魔道士として戦うつもりなんです。よろしくお願いします」仮にも魔法剣士と名乗っている身としては少し競争心が芽生えたが、魔道士が増えるのはありがたい。そう、と私はうなずいた。
「そして、私もだ。魔道士として戦って欲しいと言われたので、ここに来た。」また助っ人か、と喜んで振り返った私はすぐに硬直した。レンが悲鳴のような声を上げる。
「マルス!」かつて私たちが敵対した、アークデーモンのマルスがそこにいた。その後、どうにかして和解に収まり、協力体制をとったらしいが、それでも私は心落ち着かない。特に私は一回、本当に戦場で向き合って戦ったんだから、なおさらだった。
「確かにアークデーモンの助っ人は心強い」言葉とは裏腹に、あはあはとレンが引きつったように笑顔を見せる。私だってそうしたいよ。
うおぉぉ…… と、遠くで大勢の雄叫びがあがった。いけない、戦いが始まったらしい。
「どうする?」ヒュールの問いかけに私は間髪いれずに答えた。「カウンターマジック、ここにいる全員に」
「おい、全員で30人はいるぞ! 精神力が持たない」「魔晶石を使お。必要なら使い切ってもいいや。カンタマは絶対に必要だよ」
「後はフィジカルエンチャントで、ストレングスを。それは僕がやる」
レンが言うが早いか、呪文詠唱を始めた。ファインベルが首を傾げる。「カンタマは、私たち3人でですか?」
「いんにゃ、ファインベルとヒュールに任せていい?」「え、どうして?」
「ああ、それでいい」
言わなくても分かってくれたヒュールに私は心で感謝すると、さっとスクロールを開いた。私は先に、これを唱えなくてはいけない。
『万物の根源たるマナよ……』書かれているとおりの呪文を唱える。焦らず、確実に、ゆっくりと。本来の私の実力に不相当な呪文を一字一句私は紡ぐ。
遠くで高らかにマイリー神のバトルソングが聞こえた。この声は多分レオナルドさんだろう。気分が高揚してくる気がする。そしてきらきらと光の粒子が私を覆った。ヒュールとファインベルのカウンターマジックが発動したか。レンはどうしただろうか、いまいち不運な彼だ、魔法に失敗していなければいいけど。
『はるかな天空に浮かぶ、天の星の一かけの力を我に。人の身にその力を示さん』向こうの精霊使いたちが集まっている方から、幾重もの光の槍が空を飛び、ジューダスの一部でもある天井にぶつかった。勇気の精霊、バルキリーの力を借りたバルきりー・ジャベリンだろう。こっちも負けていられない。
「メテオ・ストライク!」唱え終わってすぐに、天変地異かと錯覚するような衝撃が空間全体を揺るがした。小さな村ぐらいなら消滅したであろう爆音が建物の外から聞こえて、私は難聴になるかと思った。立っていられずに転ぶものがいたらしく、どこかで悪態が聞こえる。
「……凄い。さすが、メテオ、究極の攻撃魔法」私は呆然となって呟いた。自分が引き起こした出来事とはとても思えない。
「おい、気を付けろ!」「へっ?」
それが私に向けられた物だと気付くのには、少し時間が必要だった。呆けて振り向いた私の目に、混沌で構成された津波のような物が覆いかぶさる。あ、死ねると思い、それきり私の意識は途切れた。
「フィナーゼ、大丈夫ですか?」その声と共に、私は目覚めた。目を開けると、精霊使いのシェフィールドがそこにいる。確か私は……
「混沌の津波が直撃したんだ。それでよく生きているね」ぼろぼろに疲れた表情で、レンが呆れたように後ろで言った。と、言うことは私は気絶したのをシェフィールドのヒーリングで癒してもらったらしい。少しは心配しろと思ったが、確かに直撃して生きているというのは凄いことかもしれない。平均をはるかに上回って頑丈な自分に私は感謝した。
「ありがとう、シェフィ。私はどれくらい気を失っていた?」「ほんの少しです。すぐ来ましたから」
よろ、と立ち上がった私は、私のすぐ隣にファインベルが倒れていたのを知った。私は深く考えずに思わず言う。
「ファインベルも回復してあげようよ」レンとヒュールの顔が曇った。シェフィが何か言いたそうに口を開け、そして閉じ、静かにかぶりを振る。
「……だから、直撃して生きているのはフィナーゼぐらいだよ。誰もがみんな、そう頑丈じゃあないんだ」私は腹に、重いもので一撃されたように感じた。吐き出されない感情がどろどろ内部で渦巻く。ファインベルを見る。目をつぶり、動かない。本来あるべき呼吸音がない。
うわぁぁ。巨大な唸りにも似た大勢の叫び声が遠くから聞こえ、マルスのメテオの大騒音と振動を感じる。それが私をかろうじて正気の世界に引き戻した。
「では、私はもう行きますよ!」と忙しそうにシェフィが背を向け走り出す。彼女には彼女のやるべきことがあるのだ。いつまでもここにいられないのだろう。そしてそれは私にも同じことが言える。「フィナーゼ、大丈夫か?」
今更のようにヒュールが私の顔色をうかがる。「平気」と私は嘘をついてソーサラー・スタッフを構えた。視界がゆがみ、回る。まるで非現実の世界にいるかのようだった。
「補助魔法はもう必要なものはかけた。後は攻撃に回るだけだよ」レンがファインベルの持っていたメイジリングと魔晶石を回収しながら言う。そうか、と私は短く呟いて、とっておきの大きな魔晶石を取り出し、いかずちを生じる魔法、ライトニングの呪文を唱える。本当はアシッドクラウドの方が単純に威力が強いのだが、それは消耗が大きすぎる。
私の身の回りに、きらきら光る明るい壁が発生した。きっとこれはバルキリー・ブレッシング、精霊使いたちの扱う、戦乙女の盾だろう。実際にかけられるのを見るのは初めてだった。私が倒れたとシェフィから聞いた精霊使いがかけてくれたのだろうが、あいにく私には確認する余裕がなかった。
『万物の根源たるマナよ、神の怒りにも似た雷の力を我に、人の身にその力を示さん』「ライトニング!」
いつも通り、スタッフの先から雷がほとばしる……はずだったが、何も起こらなかった。魔晶石の光が急速に小さくなったことから消耗はされたと思うんだが。
「何失敗しているんだ!」レンがいらだたしそうに叫ぶ。発動に失敗したのか。たまにこういうことがあるのだが、実際にこの身で体験したのは初めてだった。どうして、何でこんなときに……!
「うぁ、魔晶石がもったいない」私はなるべく深刻に聞こえないようにうめいて、魔晶石を捨てた。もうこんな弱々しい光ではこの戦いの役には立たない。売れば1財産の値打ちだったのだけど、こうなっては仕方がない。
空間全体に大爆発が起きた。爆発は私たちがいるところまで及び、巻き込む。フォース・エクスプロージョンだろうが、戦乙女の盾で守られた私には傷1つつかず、私に今がどういう状態であるかを認識させるだけだった。
爆風と悲鳴と、そして血の臭いがたちこめる。それを感じて、私は暗い天井を、ジューダスの一部であるそれを見た。
嘆いている場合ではない、悲嘆にくれている場合ではない、やるべきこと、なすべきことがあり、そのために私は今ここへ来た。
意識が鮮明になる。呪文は自然に口から出た。もう魔晶石はない、愛しい使い魔も外においてきた、自前の精神力のみで、全力を出し切らなくてはいけない。
同じ呪文がすぐ近くから聞こえる、男性にしては高いソプラノ声と、耳に心地良いアルトの声。考えること、志は同じようだ。
今までの冒険のために。滅びた村や、人々のために。みんなのために。これからのために。英雄になるために。
「ライトニングゥゥ!!」私のスタッフから巨大な雷光が走った。今まで何回もライトニングを撃った事がある私でも、このような強大な力の塊は見たことがない。それと同時に全身に虚脱感が満ち、思わずへたりこむ。立っていられない。自分がかろうじて意識を保っていられる以外の精神力をつぎ込んだんだ、倒れないだけましだろう。一方で「うゎ……」とレンが呟く。杖の先から何もでてこない所を見ると、発動にレンは失敗したみたいだ。気の毒に。
私とヒュール、2人分の雷光が空を切り裂き、闇を滅ぼさんと何よりも暗い天に消える。同時に精霊使いたちのバリキリー・ジャベリンの光の槍が、ストーンブラストの石つぶてが舞う。マルスのメテオの轟音が聞こえる。
そして、
天が割れる。いや、あれは空ではない、ジューダスと混沌自身だ。今度こそ立てないほどの振動が走り、私は座った状態から本格的に転んだ。何とか立とうともがいている私の耳に、力ない呟きが聞こえてきた。
「……真実を認めぬ……愚か者たちよ……新た……なる世界を……拒むのな……ら……
……永劫に……苦しむがいい……
永遠に……永遠に……えいえ……えい……えん……に……」
それが、ジューダスの最後だった。
最後の余韻が消えると同時に私たちを覆っていた暗い壁が崩れ消え去り、塵となる。そこで私が見たものは、少し前までファンドリアと呼ばれていた国だったもの。今は何もないただの荒野で、それでもしかし、地面の端にはかすかな緑が、生命の息吹が見えた。
一呼吸して、この場に歓声が満ちた。私も柄にもなく目に熱いものを感じ、それをレンやヒュールに見られるのが恥ずかしくて目を閉じた。
そうして、オーファンを中心にラムリアース、ファンドリアを揺るがしたここ1年の事件は、ワイバーンズテイルの冒険者によって劇的に幕を閉じた。
最後のページ
その夜、ワイバーンズテイルの酒場は騒ぎしかった。いつものことと言ったらそうかもしれないが、今日は本当にいつもに倍増して騒がしい。もちろんそれには正当な理由がある。ジューダスを倒し、今までの事件にどうにかけりをつけた、その祝いの宴なのだ。多少は、いや、大いに羽目を外しても文句は出ないだろう。それにこのようなどんちゃん騒ぎには、これまでの戦いで死んだ仲間たちの弔いの意もあるのだ。もっともこれはアバウトさんの言だが。
テーブルに山と詰まれたご馳走を前に、ほくほく顔でケインさんが火酒と共に食している。いい感じで出来上がったレヴィとトランスが意味不明のことを叫んでは笑いあっている。とうとう今回の冒険ではエネルギーボルトしか攻撃魔法を使えなかったレンが隅でいじけている。風呂上りのさっぱりしたアバウトさんがアップルパイとコーヒーを手にシェフィールドと話している。プリシィが普段は飲まない強い酒を口にし赤くなっている。何も乗っていないテーブルの上ではピッツとリップのグラスランナーコンビが身軽にグラランダンスを踊っている。レオルドさんとエフトが宗教談義に花を咲かせ、ジョージとジャネットが共に酒を酌み交わしている。エイジスが、クロトーが、カルディナが、レニーが、ティアさんが、みんなが、みんながいる。みんな共に笑い、無事であること、共に生きていること、今が平和であることを祝っている。
私はそれを遠目で見つつ、今まで書き込んでいた手記を閉じた。冒険に出る前は白紙だった私の手記は今はもう、一行も書き込めないほどびっしり書き込まれている。それを見て、私は感慨深く物思いにふけた。
始まりのころの私は、魔法はライトぐらいの初歩止まり、剣もコボルトを相手にするのがやっとの実力だった。それがたったの10ヶ月ばかりで賢者の学院の導師にまでなり、剣も今ではオーガーと一対一で引けを取らない。それだけではない。私はいろいろなことを学んだ。世界の隠された真理について、自分を殺してまで何かのために生きることについて。友も山のようにできた。1回きりでもう会わない者もいる。ずっと長い付き合いの者もいる。死に別れた者だって……いる。
それら全てが詰まっている、今ではかけがいのない宝となった手記の表紙を見て、私は立ち上がった。足元で使い魔のきょんたがすり寄ってくる。